一人親方労災保険に未加入のデメリットとは?

建設業一人親方は労災保険に、特別に加入することができます。

もちろん加入しないという選択もできます。

加入すべき理由と、未加入の場合はどんなデメリットがあるのか。

そして加入する際の注意点などについても解説したいと思います。

労災保険未加入は仕事中の怪我での治療費で困る

労災保険未加入によって困ることの1つとして、労災保険未加入による弊害が、仕事中の怪我による治療費が出せなくなってします点があります。

というのも、労災保険に加入していれば仕事中や通勤中の怪我の治療費は全額労災保険から補償されます。

ですからどんなに大怪我だろうと、もし入院したとしてもお金を出さなくていいのが労災保険なのです。

治療費全額無料ということです。

健康保険は労災では使えない!

もし仮に労災保険に加入しておらず、仕事中にケガをしてしまったら最悪です。ここで抑えておきたいのが国民健康保険は法律上、労災には使えないということです。公営国保では確認や審査が甘いところもあって労災であっても、国保が使えてしまうところもあります。しかしながら原則は使えません。もし国保が使えたとしても通院した場合は、3割負担になってしまうので、大怪我の場合は結構な金額の負担になってしまうこともあります。

後で労災と発覚し、国保から治療費の返還を求められるケースも増えてきました。

この手続きが結構面倒なのでご承知おきいただきたい点です。

さらに入院をしないといけない場合は目も当てられません。

例えば、鎖骨などを折ってしまって、手術でボルトを入れないといけない場合、入院費や検査費用だけでも、10万円〜20万円の出費になるんですよね。

ですから結構な治療費を支払うことになります。そしてもし入院しなかったとしても、骨を折ればレントゲンなどの検査やMRIなどを受ける場合もあるため数万円の出費となります。

さらにその間は働けないので、個人事業主である一人親方は有給や傷病手当金もなく、収入が途絶えてしまいます。

そして仕事に穴を開けてしまうことにもなるため、復帰後もスムーズに仕事がもらえるような立場ではないということになります。

一人親方になれば大きな怪我をするだけでかなり痛手を被る可能性が高くなります。

労災保険は休業補償もある

ここでもし労災保険に加入していた場合は、もう1つの利点があります。

それは休業補償がもらえると言うこと。

医師が認めた場合(ドクターストップがかかった)にのみに適応となりますが、加入時に設定した給付基礎日額によって、休業した日数分を算出し、給付基礎日額の8割が給付されると言う流れ。

もし加入していれば日額1万円以上もらうことができるうえ、医療費も出す必要がなくなるのでかなり助かります。

むしろ会社勤めの人より一人親方の方が、労災保険の必要性は高いといえるでしょう。

労災保険が使いづらい場面もある

せっかく労災保険に加入したのに、労災が使えないという場合もあるようです。

過去に問題になった労災隠し問題ですね。

労災保険を使用すると、現場が止まってしまうことがあったり、重大事故では数日間に渡って止まることも。

そうなると現場のスケジュールが大幅に狂って、作業が間に合わないだけでなく、職人さんは仕事が飛んでしまったり、現場は新たに職人さんの確保をしなくてはいけないなど大変なことになり兼ねません。

数日間止まってしまった工事はもともとギリギリの工期で計画されているので、大抵の場合は全ての作業が後ろにずれていくことに。

工期が遅れれば、相当な痛手になってしまいます。

そこで現場に迷惑をかけたくない下請会社は、労災を使用せずに健康保険での治療を余儀なくされてしまうということです。そして会社から治療費を支払ってもらうなんてこともあったそうです。

これは元請けの圧力もあったでしょうし、そこから下請は自発的にやっていたこともあるでしょう。

しかし、一人親方労災保険に加入している場合は、元請けに気兼ねなく労災保険を使うことが出来ます。なぜなら労災の手続きを行うのは元請けではなく、一人親方が加入している団体であるからです。あなたが孫請けで下請の会社から労災隠しを強要される可能性もありますが、基本的には、一人親方が自分の意思で労災保険を使うことが出来ます。ここが一人親方労災保険に加入しているメリットでもあります。

労災保険未加入だと現場に入れない可能性

労災保険未加入だともう一つ問題があります。それは現場に入れない可能性についてです。

なぜなら大手ゼネコンの工事では安全書類というものを提出します。

そこでは一人親方も含め、現場で働くすべの人が労災保険に加入しているかをチェックしている書類で、そこに労災保険加入番号(労働保険番号)などの記入も必要です。

実際これは労災隠し問題から、労災隠しができないように、そして建設業界の労働者を守るために行われていることなのですが、逆にこれが一人親方を苦しめることにもつながっています。

労災保険なんて必要ないと思っていても、大きい現場に入れない可能性があるのならば加入せざるを得ないことになります。

労災保険に加入しないと、入れない現場があるということですね。

参考 一人親方労災保険は義務か?

安全書類の他にも原因がある

これも労災隠し問題なのですが、安全書類の他にも元請けが労災保険に加入させる理由があるのです。

それは使用者の責任問題です。

というのも、現在は労災訴訟というのがあって、もし労災事故で重傷を負ったり、残念ながら死亡してしまった場合、本人や遺族が訴訟を起こして賠償金を求めてくることがあるのです。

その金額は自動車保険と同じぐらい。命の値段なのでだいたい2億から3億円ぐらいの支払命令の判例があります。

ですから、その訴訟を行わせないためにも、遺族を怒らせないために。労災保険への加入を推奨するわけですね。

なぜなら労災保険の死亡保険金が入れば大抵の場合は遺族も納得してくれるからです。

しかし労災保険に加入しておらず、1銭も補償されず家族が露頭に迷ったとき、その怒りの矛先は元請けに向かうわけです。

実際にそこから数億円の支払命令が判決として出たことは少なくありません。

ですから元請けは、最悪の場合を想定して、労災保険に加入していない一人親方は使わないという選択をしている会社は少なくありません。

さらに労災保険と併せて民間の損保会社などが販売している賠償責任保険への加入も義務付けている元請け会社もあるくらいです。

要するに加入していないだけで、大小関わらず入れない現場が存在するということです。

ですから労災保険は必ず加入しておきましょう。

一人親方の労災保険の加入方法

では労災保険に加入する方法についてなんですが、一人親方は基本的に個人事業主なので労災保険には加入できません。

ここまで書いておいてなにを言ってるんだと思うかもしれませんが、労災保険は労働者のための保険なので、個人事業主である一人親方は原則加入できません。

ではどうするかというと、単独で加入できないため、一人親方部会などの団体に所属して、そこで団体加入することになります。労災保険関係の事務処理を、組合側に任せることができるというメリットもあります。

ただしこれはメリットだではなくデメリットになり得ます。

というのも労災は申請をしないと医療費などがおりません。

その労災保険特別加入団体の担当者が手続きをしてくれなければ、なかなか申請できないので、保険金の支払いが遅れてしまうということもあるようです。

ですから労災保険の加入には、労災事故が起きたことを想定してしっかり労災申請手続きをしてくれる団体選びが重要といえるでしょう。

加入する団体によっては変な活動に参加させられることも

労災保険の特別加入するためには、一人親方部会や組合、そして他にも様々な団体を地域ごとに自由に選ぶことができます。

その団体の中には政治的な活動へ参加を強要されたり、なにか特別な新聞を購入させられたり、青年会という名の会合に参加させられたりします。

そういう行事や活動が好きな方はいいのですが、そんなお付き合いが嫌いな方はそういう団体は避けた方がいいでしょう。

基本的に参加は自由ではあるのですが、ある意味で強要させられたりしつこく勧誘があったり、またはその年会費や月会費が手渡しになっていて集金を依頼されたり、会合に参加しなければ支払えないシステムになっている場合もあります。ですからそういった行事があるかないかは確認しておきましょう。

参考 一人親方が土建組合に加入するデメリットとは

年会費や入会費は気をつけて確認しよう!

労災保険は国が運営している保険なので、基本的に保険料はどこで加入しても同じです。

ただ団体に加入する必要があるので、多かれ少なかれ会費が必要です。

そして加入の際には入会費や登録費が必要な場合もあります。

総合して安い団体を選べば、トータルで安くすませられるのですが、気をつけるべきポイントは2つあります。

1つ目は、2年目から年会費が高くなるところは避ける

2つ目は、事務処理が遅いところは避ける

この2つ。

1つめは最初だけ安いため、つられて加入すると2年目以降に年会費が高くなって、いつの間にか高額請求されるパターンです。

2つ目は、事務処理が遅いと労災申請が遅くて様々な書類やお金に困る可能性がるからです。

この2つに気をつけて、労災保険に加入する団体を選んでみてください。

労災保険、未加入のデメリット まとめ

労災保険の特別加入制度は、法律上は強制ではなく、任意なので加入されない方もいます。しかし、そもそも一人親方労災保険は、一人親方を保護するために出来た制度で、義務と言うよりは一人親方の権利に近い制度です。

昨今では、行政の強力な指導で、一人親方労災保険に加入していないと入れない現場が増えました。一人親方労災保険に未加入のデメリットの方が遙かに大きくなっています。