電気工事の一人親方さんの注意すべきポイントは3つ
- モノのリスク
- 加害者としてのリスク
- ケガのリスク
の3つです。
この3つについて詳しく見ていくと共に、対策についても書いていこうと思います。
モノのリスク

一つ目、モノのリスクとは、自分が所有しているものに対するリスクを指します。たとえば、自分の工具や現場に置いてある資材が盗難されたり、破損・破壊されたりするケースです。特に、仕事道具である工具一式が盗まれてしまうと、仕事ができなくなり大きな損失につながります。
対策方法
このようなリスクに備える方法として、保険の活用があります。比較的安価な保険料で加入できるものも多く、火災保険や自動車保険と同様に、特約として申し込むことが可能です。
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現場での被害 → 工事賠償責任保険
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自動車周りでの被害 → 自動車保険
など、状況に応じて利用できる保険が用意されています。
加入のポイント
もしモノのリスクに備える保険を検討する場合は、損害保険を扱っている保険代理店に相談すると安心です。専門家に相談することで、自分の仕事や環境に合った最適な保険を選ぶことができます。
加害者としてのリスク

二つ目、加害者としてのリスクとは、自分のものではなく、他人の物や人に損害を与えてしまうリスクを指します。
例えば、自動車を運転中に人を怪我させてしまったり、他の車にぶつけて修理費が発生するケースがあります。電気工事業でも、住宅・工場・商業施設などで工事を行う際、次のようなリスクが考えられます。
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工事中に周囲の物に肘を当てて壊してしまう
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工事ミスにより設備を故障させてしまう
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レンタルしている機械を破損させてしまう
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管理すべき物品に損害を与えてしまう
対策方法
このようなリスクにも保険で対応することが可能です。
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自動車事故 → 自動車保険でのみ対応可能
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工事や現場での損害 → 賠償責任保険(工事保険)で対応可能
賠償責任保険に加入しておくことで、万が一の損害賠償に備えることができます。
保険加入のポイント
保険に加入する際は、損害保険会社を扱う代理店に相談するのがおすすめです。
ただし、個人向けの保険しか扱っていない代理店だと、工事保険や建設業向けの保険に詳しくない場合があります。
そのため、建設業や工事関連の保険を得意とする代理店を選んで相談することが重要です。
ケガのリスク

最後に怪我のリスクとは、自分はこれまで怪我をしたことがないし、これからも怪我をする想像がつかないと感じてらっしゃる一人親方もいらっしゃると思います。
しかし、怪我や事故は突然やってくるものです。
たとえ今は問題なく作業できていたとしても、疲労や寝不足、集中力の途切れなど、ほんの少しの油断が事故につながることがあります。
つまり、怪我や事故のリスクは、誰にでも常に存在するものです。
次に、電気工事における重大な事故の事例も紹介していきます。
【事故事例①】製鉄所のウインチの操作盤の配線作業中に感電し死亡
この災害は、製鉄所の熱延工場において、ウインチ等の操作盤内の配線作業中に発生したものである。
災害発生当日の朝、製鉄所内の電気工事を請け負っているZ社の作業者A~Eの5名は、製鉄所から熱延工場の結束機の防熱板の昇降ウインチの交換作業の発注を受けたY社の現場責任者Fから、製鉄所がY社に交付した工事指示書によりウインチ交換作業の指示を受け、さらに、口頭で付帯する配線の追加作業の指示を受けた。
作業分担は、D~Fの3名がウインチの交換作業を行い、A~Cの3名が配線のための配管用の溝を床に作ることになり、それぞれが直ちに作業に取りかかった。
午前11時頃にウインチの交換が終了したので、D~Fの3名は、Aらが行うコンクリート床の「はつり」作業に加わった。
昼の休憩を挟んで作業が続けられ、午後2時頃には「はつり」作業が終了したので、6名で操作盤への配線の挿入を行うことになった。
作業は、EとFが操作盤を床に固定している脚の内側に配線用のパイプを挿入し、続いて下からパイプに新たな配線を挿入した。
このとき、Aは、B~Dの3名とともに操作盤のパネルを開けてパイプから配線が出てくるか否かを確認していたが、操作盤内を停電せずに行っていたため、操作盤内の端子で露出している充電部にAが接触し感電した。
Aは、その後病院に移送されたが死亡した。
Aらは、通常時と同じ作業服と軍手で作業を行っており、感電防止のための絶縁用ゴム手袋等の保護具は使用していなかった。
熱延工場の結束機の防熱板の昇降ウインチの操作盤の配線作業は、以前から計画されていたが、操作盤の電源を切ると他の生産設備が稼動できなくなるので、製鉄所では、当日は電源を切らずにウインチの交換のみ行う旨、工事指示書をY社に交付したが、指示書を受け取ったY社のBはウインチの交換に付帯する操作盤への配線作業も行うと勘違いした。
製鉄所からY社への指示は、工事指示書の交付のみであった。
Bは、配線作業については、作業内容をよく把握しないまま口頭で指示し、作業を行った。
この事故の原因は?
この災害の原因としては、次のことが考えられる。
工事指示書の内容確認が不十分であったこと。
当日は、元々停電作業によりウインチの交換と付帯する操作盤の配線作業が予定されていたが、工事指示書の内容はウインチの交換のみであった。
発注者から元請のY社への指示は書面の交付のみであり、両者による工事指示書の内容確認は行われなかった。
そのため、Y社のFは、付帯する操作盤の配線作業も行うものと勘違いして、作業を始めた。
感電防止措置が講じられていなかったこと。
Bが作業内容をよく把握しておらず、通電状態の操作盤の内部での作業があるにもかかわらず、充電部分への絶縁用防護具の装着、絶縁用保護具の使用等、感電防止のための措置を事前に講じることなく、作業を行った。
【事故事例②】ビルの高圧受変電設備の改修工事中に充電されていた断路器のブレードに触れ感電
この災害は、ビルの電気設備の改修工事において発生したものである。
この工事は、約5か月かけてビル内にある高圧受変電設備(キュービクルタイプ)、非常用発電設備等のリニューアルを行うもので、建物全体の工事を請け負った建設会社から電気設備会社Aが一括して受注し、一般電気工事の作業を別の会社Bに発注したが、実際の作業の一部は工事応援という形で被災者の属する会社Cの3名が行っていた。
災害発生当日、被災者らは、前日に引き続き午前7時から一般電灯系について停電による作業を行い、この作業は午前中に終了した。
午後からは午前の休憩のときにB社から当日の追加の作業として指示された「高圧発電引込盤の中に中央監視室用の信号ケーブルを引き込む」作業をB社の作業指揮者と被災者および同僚で行うことになった。
引き込み作業は、高圧発電引込盤(幅80cm,高さ230cm)の上方にあるラックから信号ケーブルを引込盤上の穴(直径10cm)に差し込み、それを下で引き込む方法で行われるものである。
最初は同僚がラック上で、指揮者は断路器への接触防止用に取り付けてあったアクリル板を取り外して引込盤上のところで引き込む作業を行い、被災者は指揮者の後ろで作業を見ていた。
ところが、ケーブル8本を引き込んだところで、指揮者はケーブルが2本足りないことに気づいた。指揮者は被災者らに2本のケーブルの追加引き込みと、全ての引き込みが終わったところで止め具を用いて整線するよう指示し、「活きているかも知れないから注意するように」と言った後、地下2階で行われている他の作業箇所の巡視を行ってから地下1階の工事事務所に戻った。
残った2人は、2本のケーブルをラック伝いに配線した後、同僚が引き続いてラック上で、被災者が責任者の行っていたケーブルを引き込む作業を行っていた。
同僚が2本目のケーブルを差し込んだ午後2時20分頃、突然ビル全体が停電となった。
このとき、被災者は、高圧発電引込盤の裏側にある一般電灯用の配電盤にもたれ掛るようにして倒れていた。
そのため直ちに救出して病院に移送したが、2時間後に電撃症のため死亡が確認された。
この事故の原因は?
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
絶縁防護措置が行われていなかったこと。
被災者が電撃を受けて死亡した直接的な原因は、充電状態にあつた断路器のブレードに接触したものと推定されるが、信号ケーブルをキュービクルタイプの高圧発電引込盤に差し込む作業の際、断路器への接触防止用のアクリル板を取り外したのに、断路器のブレード部分を絶縁用防具等により防護しなかった。
作業計画が明確に定められていなかったこと災害は、当日の作業予定にはなかった信号ケーブルを高圧発電引込盤に引き込む作業で発生した。
一連の作業計画の中でこの作業を停電で実施するのか、活線近接の作業で行うのかの計画が定められていなかった。
また、翌日の作業計画については、前日の午後に電気工事一式を請け負った会社からビルのリニューアル工事全体を請け負った建設会社に日報の形で提出するようになっていたが、形式的で計画の変更の手順等についての定めもなかった。
作業者が充電部分を認識しないまま作業を行ったこと被災者は、信号ケーブルを高圧発電引込盤に引き込む作業を作業責任者の後を引き継いで行っていて被災した。
その作業について特段の説明、指示を受けることなく、直前に見ていた動作を真似て作業を実施したもので、充電部分があることを認識していなかった。
安全管理が行われていなかったこと。
電気設備に関する一連のリニューアル工事は、銀行に電気を供給していることから、全停電で行うことが難しく、必然的に活線近接作業が予測されていた。
しかし、感電防止に関する安全管理等について関係会社間で十分な連絡調整を実施していなかった。
事故は突然やってくる
この2つの事故から見られる電気工事の事故はいつ起こってもおかしくないと言うこと。
熟練の職人であっても 怪我をしてしまう恐れがあるし場合によってはなくなってしまうケースもあるでしょう。
ご存知の通り電気工事はいつ事故が起こってもおかしくはない状態です。
そして何よりも見えないものを扱っているため突然事故が起こってきます。
2つの事故の共通点は作業計画が曖昧だったこと。
これはどんな現場でも行われていることではないでしょうか。
常に怪我と隣り合わせだと言う意識を持って、毎日現場に立つ必要があると思います建設業界にいる限りいつか怪我はやってくると思って行動しておいた方がいいかもしれません。
一人親方さんがケガをしたら生活は一変する

ここからは一人親方がケガをしたらどうなるかについてお話ししていきます。
軽い怪我であれば、仕事を続けることができる場合もあり、大きな問題にはなりません。
多少の不自由があっても、収入を確保でき、取引先に迷惑をかけることも少ないでしょう。この場合、心配するのは怪我の治療費だけです。少し出費は痛いかもしれませんが、どうにか対応できる場合もあります。
しかし、怪我の具合が悪く、仕事を続けられない場合は大きな問題になります。
心配は収入の減少です。
一人親方は働くことで収入を得ているため、働けなければ収入はゼロになります。
もし怪我で1か月間仕事ができなかった場合、貯金がある方はまだ耐えられるかもしれませんが、貯金がなければ生活費や家賃、光熱費、ローンなどの支払いに困ることになります。
このような場合に備えるのが、労災保険の特別加入です。
怪我や事故で仕事ができなくなったときの金銭的リスクに備えるため、一人親方でも加入しておくことが重要です。
労災保険の特別加入
一人親方は基本的に個人事業主のため、通常の労災保険には加入できません。
しかし、特別加入という制度を利用することで、労災保険に加入することが可能です。
特別加入の労災保険では、次のような補償が受けられます。
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治療費の全額負担:ケガの際の病院での治療費は全額カバーされます
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休業補償:仕事を休んだ日数に応じて一定の割合の補償金が支給されます
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後遺障害補償:ケガの後遺症が残った場合に補償
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死亡補償:場合によっては死亡時の補償も適用
補償内容は手厚く、保険料も国が運営しているため低額で抑えられています。
建設業の一人親方にとって、加入しない選択肢はほとんどありません。
現在のリスクから身を守るためにも、必ず労災保険の特別加入を検討してください。
まとめ
電気工事業の一人親方のリスクは大きく分けて3つ。
- モノのリスク
- 加害者としてのリスク
- 怪我のリスク
モノのリスクも加害者としてのリスクは、最寄りの損害保険を取り扱う保険代理店へ。
そして労災保険の特別加入については中部労災一人親方部会までご相談くださいませ。
投稿者プロフィール

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【団体概要と運営方針】中部労災一人親方部会(一人親方部会グループ)は、厚生労働大臣・岐阜労働局から特別加入団体として承認されております。建設業一人親方の労災保険の加入手続きや労災事故対応を主な業務として運営され、建設業に従事する一人親方様向けに有益な情報配信を随時行っております。
【中部労災の特徴】一人親方様が当団体で労災保険にご加入いただくことで、会員専用建設国保、会員優待サービス(一人親方部会クラブオフ)のご利用をはじめ、万が一の事故対応やきめ細やかなアフターフォローができるよう専用アプリを提供しております。
【団体メッセージ】手に職を武器に働く一人親方様のために、中部労災一人親方部会は少しでもお役にたてるよう日々変化し精進してまいります。建設業界の益々のご発展をお祈り申し上げます。
★一人親方部会グループ公式アプ→https://www.saitama631.com/app.html
★一人親方部会クラブオフ→https://www.saitama631.com/cluboff.html
■YouTube『一人親方部会ちゃんねる』https://www.youtube.com/channel/UCZTlxZRxDDgren56lAn5boQ
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