左官工事の一人親方のリスクは大きく分けて3つ
- モノのリスク
- 加害者としてのリスク
- ケガのリスク
この3つについて詳しく見ていくと共に、対策についても書いていこうと思います。
モノのリスク
モノのリスクとは 自分が持っているものに対するリスクです。
自分のものが盗難をされたりもしくは現場に置いてある資材を盗難されたり、そういったものがなくなるリスクのことをいいます。
これは盗難であったりもしくは破壊されることもあります。
工具一式が盗難されたら怖いですよね。
対策としては比較的安価で保険に加入することができます。
一般的な保険会社にて自動車保険と同じように申し込むことができて 、火災保険や自動車保険等と一緒に特約として申し込むことも可能。
現場における被害の場合は工事保険。
自動車周りにおける被害の場合は自動車保険。
などその他にも様々な保険が用意されています。
もしこのリスクに対する保険に入りたいのであれば「損保ジャパン」や「東京海上」といった損害保険などを取り扱っている保険代理店などに相談すると良いでしょう。
加害者としてのリスク
そして2つ目のリスクが加害者としてのリスクです。
例えば自動車を運転中に人を怪我をさせてしまったりもしくは他の車に当ててしまって修理が必要になったり、 こういった自分のものではなく誰かのものや他人を怪我させてしまった時などの、金銭的な負担を加害者としてのリスクといいます。
左官工事業の場合は最近では ほぼできあがっている新築の住宅への工事がほとんどでしょう。
その結果既に出来上がっているものを破壊してしまう恐れがあります。
どういうことかと言うとすでに建設が終わっている外壁の漆喰塗りであったりとか そういった工事では何よりも周りのものを破壊しないように気をつける必要があります。
このような場合でも保険によって対応することが可能です。
基本的には工事保険や自動車保険等に 作業することで金銭的なリスクに対応することができます。
自動車での事故においては自動車保険でしか対応することができません。
この他の加害者になるリスクについては様々な保険が用意されています。
工事保険として賠償責任保険と言うものに加入することで対応できます。
こちらも「損保ジャパン」や「東京海上」などの損害保険を扱っている代理店に相談するといいでしょう。
場合によっては個人の保険代理店であれば法人の保険に詳しくない場合もあります。
工事保険や建設会社等の保険が得意な代理店を見つけて相談するようにしましょう。
ケガのリスク
そして最後にケガのリスクです。
自分はこれまでケガをしたことがないし、これからもケガをする想像がつかないと感じてらっしゃる一人親方もいらっしゃると思います。
特に左官工事業の場合はケガのリスクはほとんど無視できるかもしれません。
しかしケガや事故というのは突然やってくるものであって、今大丈夫であったとしても少し疲れていたりとかもしくは寝不足であったりとか、ついうっかり集中力が途切れている場合もあるでしょう。
建設現場では自分の仕事内容にかかわらず他の工事の巻き添えを食うこともあるでしょう。
つまり ケガや事故と言うのは、 突然襲ってくるものです。
大丈夫だと思っている方にもケガのリスクはつきまといます。
ここからは左官工事における重大な事故について事例を共有していきます。
【事故事例①】高所作業車により作業中、送電線に接触して感電
本件の災害は、鉄骨2階建て一部3階建ての工場の新築工事において、左官作業中に発生したものである。
この新築工事は、A社が元請けで、そのうち左官工事一式をB社が請け負い、被災者Cと同僚Dの2人が2カ月ほど前から断続的に現場に入って作業をしていた。
左官工事に使用していた高所作業車は、B社がリース会社から借りたもので、トラック積載形のブーム式(最大作業床地上高さは24m)で、当日は、地上高さ約14mまでの間で使用されていた。
また、災害発生現場には75,000ボルトの特別高圧の送電線があり、建屋とその送電線との間隔は約13mで、地上から12.7m、15mおよび17.6mの高さに位置していた。
災害が発生した日は、午前中は塗装作業、午後から左官作業という予定であったが、当日は天気が良く、屋根の防水工事を優先させるために、朝から左官作業をすることになった。
作業は、高さ14mのエレベーター室の屋上で、防水下地のモルタルを塗るもので、このモルタルを地上から建屋の外部足場の最上段に運ぶために、高所作業車が使用された。
この高所作業車による荷上げ作業は、バケツに入れられたモルタルを高所作業車の作業床上に載せ、同時にCとDの2人が乗り込み、ブームを起伏し伸長させた後、建屋側に旋回させて外部足場の最上段に着け、モルタルを屋上に上げるものであった。
災害は、このモルタル塗りを終え、エレベーター室部から、図に示す東側のひさし部へ場所を移動しようとして、ブームを旋回させた時に発生した。
その状況は、バケツを作業床に載せ、CとDが乗り込み、Cの運転のもとに、作業床を送電線側(Cの背後方向)に旋回させ、120度ほど旋回したところで、地上から15mの位置にあった送電線にCが触れ、感電したものである。
この事故の原因は?
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
高所作業車の作業範囲に送電線があるにもかかわらず、作業床を送電線側に旋回させたこと。
作業床上での操作が、危険区域を背にするような方向となったため、安全確認ができなかったこと。
【事故事例②】作業後2階からはしごで降りようとして墜落
本災害は、個人住宅増築工事において、2階の壁の下地の竹編み作業を行っていた作業者が、休憩しようとして1階にはしごで降りようとしたところ、開口部から3.3m下のコンクリート床に墜落したものである。
本工事は、個人住宅に隣接して8.9mの2階建て木造住宅を増築するもので、大工工事については、ほかの建築会社が請け負い、被災者の所属する工務店は左官工事を発注者から直接請け負っていた。
災害発生当日までに大工は柱、梁、桁および屋根の骨組みを完成させており、工務店の事業主は大工工事の進捗に合わせ1階部分の下地の竹編み作業を終わっていた。
災害発生当日は、2階の壁の下地の竹編み作業を行うことになり、事業主は被災者にこの作業を手伝わせることにした。
その内容は、事業主が、竹を取り付ける際には竹を、高い箇所を縄で縛る際には縄を事業主に手渡すことおよび低い部分の竹を取り付ける作業であった。
2階の作業床は、大工が建前の際に墜落防止用に梁や桁の上にベニヤ板を敷いたものをそのまま利用し、2階への昇降設備としては、発注者が現場に置いていた脚立を伸ばし、はしごとして作業床の開口部(奥行1m×幅2m 1階からの高さ3.3m)に立てかけて使用していた。
被災者は、2階の壁の下地の横竹の取り付けを行っていたが、午前10時頃休憩のため1階に降りようとして、開口部から3.3m下のコンクリート張りの土間に墜落した。
この際、被災者は病院で治療を受けたが、死亡したものである。被災者は保護帽を被っていなかった。
なお、はしごとして使っていた脚立は、屈伸部分が金具で固定され、腐食、損傷はなく、丈夫な構造で、脚部にはゴム製のすべり止めが取り付けられていたが、伸ばしたときの長さが3.6mで、開口部に立てかけると2階床からは20cm程度しか突出しないものであった。
また、被災者は、左官手伝いの仕事については約30年の経験を有していた。
この事故の原因は?
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
2階の作業床の昇降部分に墜落により作業者に危険を及ぼす恐れのある開口部があったにもかかわらず、覆い等適切な墜落防止措置をとっていなかったこと。
昇降設備として脚立を伸ばした移動はしごを開口部に立てかけて使用していたが、この移動はしごの長さが短く、2階の作業床から20cm程しか突出していなかったため、昇降する際に不自然な姿勢を強いられる状況となっていたこと。
すなわち、安全な昇降設備が設けられていなかったこと。
保護帽を着用していなかったこと。
事故は突然やってくる
この2つの事故の共通点は 左官の職人が左官工事を行っていない時に起こった事故です。
つまりケガの可能性の少ない左官工事であっても建設現場では常にケガの恐れがあると言う事。
左官工事自体はケガの少ない工事だとは思いますが他の場所でケガをする恐れがあるのならケガのリスクと言うのは他の工事に 比べれば少ないのかもしれませんが対策をとっておくべきでしょう。
事故は突然やってきます。
一人親方がケガをしたら生活は一変する
ここからは一人親方がケガをしたらどうなるかについてお話ししていきます。
ケガをしたとしても軽症で仕事が続けられるならまだ問題ありません。
少し怪我の影響で仕事がしずらくても何とか収入を確保することができます。
取引先にも迷惑をかけることもないでしょう。
この場合の心配事はケガの治療費のみです。
ケガの治療費だけであれば少し手痛い出費にはなりますがどうにかなるかもしれません。
しかしケガの具合が悪く仕事を継続できない場合はどうなんでしょうか。
まず1つ目の心配は収入の心配です。
一人親方は働くことによって収入を得ることができます。
これを裏返せば働かなければ収入を得ることはできないと言うことになりますね。
ケガをしてしまって1ヵ月間仕事ができなかったらどうなるでしょうか。
貯金がたくさんある方はいいかもしれません。
それでも貯金は減る一方です。
収入はありませんからね。
さらに貯金がもしないとすれば恐ろしいことが起きてきます。
働いていなくても家の家賃食費光熱費等は確実に出て行きます。
何かしらのローンを組んでいる場合もあるでしょう。
その支払いはどうなるでしょうか。。。
おそらく首が回らなくなり困り果ててしまうでしょう。
その場合の対策のために必要なのが労災保険の特別加入です。
労災保険の特別加入
一人親方は基本的には個人事業主なので労災保険に加入することができません。
しかし特例によって特別加入と言う形で労災保険に加入することができます。
この労災保険では、 怪我の病院での治療費は全額負担されますし、 その間の休業補償も休んだ日数分出ることになります。
もちろん満額が保障されるわけではありませんが一定の割合の負担が休業中毎日加算されていきますので、 休業補償があるのとないのとではかなり違うでしょう。
このほかにも労災保険では後遺障害が残った場合の補償であったりとか、 場合によっては亡くなった場合の補償などもされることになっています。
それでいて保険料はかなり安く抑えられてます。
なぜなら国が経営する保険だからです。
国の予算を使った保険なので補償内容は手厚く保険料は安く済んでいるわけですね。
建設業の一人親方にとって入らない選択肢はないでしょう。
今のリスクを防ぐためにも必ず労災保険の 特別加入はしておいてください。
参考記事:一人親方労災保険の仕組み
まとめ
左官工事業の一人親方のリスクは大きく分けて3つ。
- モノのリスク
- 加害者としてのリスク
- 怪我のリスク
モノのリスクも加害者としてのリスクは、最寄りの損保ジャパンや東京海上などの損害保険を取り扱う保険代理店へ。
そして労災保険の特別加入については中部労災一人親方部会までご相談くださいませ。
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