
一人親方の皆さんにとって、労災保険の短期加入はあまり得策とは言えません。
短期加入では、けがや事故の補償対象外となるケースがあり、いざという時に十分な補償が受けられない可能性があります。
さらに、加入・脱退の手続きが頻繁に必要になるため、事務負担も増えがちです。
年間加入にすれば、保険料は一見高く見えますが、結果的には短期加入を繰り返す場合と大差はありません。
安心と手間の少なさを考えると、年間加入のほうが合理的な選択と言えるでしょう。
短期加入のデメリット
短期加入のデメリットは
- 月割りの支払額が高くなる
- 労災の認定が降りにくい
- 元請けに信用されない
の3つのデメリットがあります。
1、短期加入を繰り返すと結局、支払額が高くなる
実は、労災保険には短期加入という制度はありません。
「短期で入れる」と言われているものは、途中でやめられる仕組みを使っているだけなんです。
つまり、もともとは年間契約をして途中で脱退しているということになります。
一見すると、短期間だけのほうが安く感じますが、手数料などを入れると1か月分の保険料は割高になりがちです。
そのうえ、短期加入を何度も繰り返すと、結果的に1年加入とあまり変わらない金額になることも多いんです。
だったら、最初から1年で加入しておいたほうが安心でお得というわけですね。
2、事故時に労災の認定が厳しくなる
短期加入や短期加入の繰り返しは、労災認定の審査において不利に働く可能性があります。
特に加入直後に事故が発生した場合、「事故後に慌てて加入したのではないか」と疑われることがあります。
たとえば、工事初日に発生した事故では、加入初日に受傷した扱いとなるため、虚偽加入を疑われるケースもあるのです。
もちろん、実際の事故であれば調査を通じて真実は明らかになりますが、認定までに時間や手間がかかることは避けられません。
こうしたリスクを考えると、安定して補償を受けられる年間加入を選ぶ方が安心です。
3、元請に疑問を持たれる
労災保険の加入期間は「労災保険被保険者証」に明記されています。
この証明書は元請けに提出する必要があるため、あなたが短期加入していることはすぐに分かります。
理解のある現場なら問題にならないこともありますが、大手企業や厳格な現場では短期加入を嫌う傾向があります。
というのも、元請けには現場で働くすべての人に労災保険を適用させる責任があるためです。
もしあなたの保険が途中で切れてしまった場合、元請けは再加入を促す義務を負います。
さらに、未加入が発覚した時点で責任を問われるのは元請けになります。
そのため、元請け側は保険期間を厳しくチェックしており、通常と異なる短期加入を敬遠するのです。
場合によっては、それだけで次回の現場に呼ばれなくなる可能性もあります。
信頼を守るためにも、年間加入で安定した状態を保つことが大切です。
国民保険は仕事中の怪我には使えない
労災保険に未加入のまま業務中にケガをした場合、健康保険では原則として補償を受けることができません。
その結果、治療費を全額自己負担(10割負担)となるリスクがあります。
通常、医療費は3割負担で済みますが、仕事中のケガは「業務災害」とみなされ、健康保険の対象外となります。
つまり、労災未加入=3倍以上の医療費負担を意味します。
現状では病院側が労災の有無を厳しく確認しないケースもありますが、近年は健康保険組合の財政悪化により、業務上のケガかどうかの調査が強化されています。
今後、「労災に該当する」と判断される事例が増えれば、全額自己負担となるケースも想定されます。
労災未加入中の事故について
労災未加入の状態で発生する事故は決して珍しくありません。
安全意識の高い方でも、労働災害は予測できないタイミングで発生することがあります。
一度重大な事故が起きると、治療費の負担増加と収入の途絶という二重のリスクに直面します。
結果として、生活の維持が難しくなる場合も少なくありません。
労災保険は、現場入場のための条件ではなく、自身を守るための最も基本的な保障制度です。
日頃からリスクを想定し、確実に加入しておくことが重要です。
一人親方労災保険は、一人親方の権利、特権

労災保険の短期加入を利用されている方の中には、制度の本質を十分に理解していない方が多く見受けられます。
しかし、労災保険は極めて少ない保険料で、非常に充実した補償が受けられる公的制度です。
そもそも、業務中のケガは健康保険の対象外であり、労災未加入の場合は全額自己負担となります。
いわゆる「弁当とケガは自分持ち」という言葉のとおり、労災未加入の状態では重大なリスクを抱えることになります。
事故は常に予測不能であり、短期加入を繰り返すことで生じる無保険期間に事故が発生する可能性も十分にあります。
労災保険の特別加入制度は、一人親方に与えられた法的な権利であり、安全を守るための重要な制度です。
わずかな掛け金で大きな安心を得られるこの仕組みを、ぜひ有効に活用してください。
★参考記事(厚労省HP引用):特別加入制度のしおり
まとめ
事故はいつも、予想もしないタイミングで起こります。
だからこそ、その瞬間に自分の生活を守れるよう、短期加入ではなく日頃からしっかり備えておくことが大切です。
たとえ事故が少ないと思われる職種でも、建設業はケガのリスクが高い業界です。
「もしものため」に備えるのが保険の本来の役割。
そして、労災保険は非常に手頃な保険料で大きな安心を得られる制度です。
建設業で一人親方として働くなら、必ず加入しておくことを強くおすすめします。
★参考記事:一人親方のための労災保険の選び方「3つのポイント」
投稿者プロフィール

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【団体概要と運営方針】中部労災一人親方部会(一人親方部会グループ)は、厚生労働大臣・岐阜労働局から特別加入団体として承認されております。建設業一人親方の労災保険の加入手続きや労災事故対応を主な業務として運営され、建設業に従事する一人親方様向けに有益な情報配信を随時行っております。
【中部労災の特徴】一人親方様が当団体で労災保険にご加入いただくことで、会員専用建設国保、会員優待サービス(一人親方部会クラブオフ)のご利用をはじめ、万が一の事故対応やきめ細やかなアフターフォローができるよう専用アプリを提供しております。
【団体メッセージ】手に職を武器に働く一人親方様のために、中部労災一人親方部会は少しでもお役にたてるよう日々変化し精進してまいります。建設業界の益々のご発展をお祈り申し上げます。
★一人親方部会グループ公式アプ→https://www.saitama631.com/app.html
★一人親方部会クラブオフ→https://www.saitama631.com/cluboff.html
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