自分の会社で働いている職人が、引き抜かれるという事態も予想されます。
腕のいい職人がいれば一緒に働きたい、自分の元で働きたいと思うのは無理もありません。
しかし引き抜かれた方は、せっかく育てた職人を手放したくないわけです。
ではどうすればいいのか、引き抜きとはどんな感じなのかについて書いていきます。
一人親方としての引き抜きとはどんな感じ?
引き抜きされる時はいったいどんな感じかというと、場所はいろいろある。
現場で親方が見ているところで堂々と誘われることはありませんが、現場に入らない時もあるでしょうし、独り立ちしていてほとんど1人で動いている職人さんもいらっしゃることと思います。
そして、突然小声で声をかけられるものです。
だいたい「日当いくらもらってるの?」から始まって、いろいろ話した結果「うちなら〇〇円出せるけどこっちで働かない?」と言われることが多いでしょう。
もしくは食事やゴルフに誘われて、その場で交渉なんてこともあります。
これは建設業界だけでなく、他の業界でもあり得る話です。
その他にも、地位を用意するとか、昇進させてあげるとか言われ、かなり耳にいい言葉を聞くことも多いでしょう。
ただし基本的に自分の育てた職人が引き抜きに会うのは喜ぶべきことです。
それだけ手塩をかけて育った職人だからこそ、別の会社が欲しいというわけで、高い給料を出してでもうちで働いて欲しいという声がかかるのは、あなたの仕事が認められているのと同じです。
ただ、引き抜かれてしまっては元も子もないのでちゃんと対策を考えましょう。
一人親方になる提案をしておく
自社にとっても、引き抜きたい会社にとっても、職人にとっても理想の解決法があるんです。
それは一人親方になること。
一人親方になって、独立して両社の仕事をうけて、職人の自由に仕事を選んでもらいましょう。
そうすれば、自社にとってどうしてもその人でないとダメな仕事に関しては、高い報酬を支払ってあげることもできる。
引き抜きたい会社にとっても、同じくその人でないといけない仕事が高い報酬を払って依頼をすることができる。
そうすれば職人にとっては年収を上げられるので幸せでしょう。
ただせっかく育てた職人が自分の元を離れていくのは、納得がいかないかもしれません。
でもその職人でないとダメな仕事は、限られているはず。
ですから優秀な人には、独立してもらって活躍してもらって、またその仕事枠で新たな新人を育てればいいだけなのです。
そうやって育った人が建設業界で活躍をして、自由に稼げるようにしてあげれば、未来絶対に恩返しがやってくるはずです。
人間は育ててもらった恩を忘れませんし、もちろん忘れる人もいるけど、何人も育てあげれば1人や2人は必ず恩返ししてくれるはずです。
もしかしたら数億円分の仕事を、あなたにもってきてくれる可能性もあるわけです。
そんな自分の弟子が日本中にいる親方がいれば、おそらく一生涯困らないでしょうね。
もちろん仕事内容によっては、その職人さんは別会社からの仕事を受ける場合もあるでしょうし、場合によってはどんどん離れていく可能性もあります。
実際引き抜きに合うということは、それだけ引っ張りだこな職人さんなわけで仕方ないですよね。
喜ぶべきことだとして納得し、次の職人を育てていきましょう。
参考記事:建設業一人親方になるための手続きについてわかりやすく解説!
前もって話し合っておくことが大事
ただ引き抜きにあった時、ほとんどの場合が、相談せずに移籍する可能性があります。
そりゃあ相談しにくいですから仕方ない。
ですから優秀な職人とは、一人親方としての働き方の選択肢を用意しておいた方がいいでしょう。
一人親方になるタイミングを伝えておくといいと思います。
それは引き抜きにあったタイミング。
引き抜きに合うということは、どこに行っても仕事ができるということで、そのタイミングで独立しれば仕事に困らないからですね。
しかもその人でないとダメな仕事もあるわけで、そうなれば単価もあげることができる。
その時が来れば、自由に一人親方になっていいと最初から言っておくのです。
そうすれば引き抜きにあった際に相談もしてくれるでしょうし、手放さずに一人親方として付き合っていくこともできるでしょう。
ただ一人親方と言えば個人事業主ですので、リスクも伴います。
仕事がなくなれば食っていくこともできません。
ですからそれなりの覚悟は必要です。
ただその変わりに、仕事の選択の自由が手に入ります。
そういったことも伝えておかないといけないでしょう。
一人親方になればメリットもデメリットもあります
まずデメリットですが
- 仕事がなければ無収入
- 事務作業を自分でやる必要がある
という点があります。
今まで事務処理や仕事をもらってくること、そして厚生年金もないので老後の準備も自分でしていく必要があるでしょう。
そしてメリットは
- 年収が増える
- 休みの日が自由
- 就業時間に縛られない
というメリットがあります。
自由に仕事が選べるので単価の高い仕事に移っていくことができるし、仕事を入れる日と入れない日の調整も自由。
もし家族のイベントがあっても必ず参加ができます。
さらに声をかけてくれた社長や親方、どちらの顔も立てることができて、どちらにも迷惑をかけることなく今回の問題を全て解決できます。
さらに社会保障がない分よりも多くの収入を得られるようになります。
このようにメリットとデメリットはあるものの、引き抜きされるだけの実力を持っている人であれば、ぜひ一人親方として独立を提案してあげるのは、職人のためでもあり、ひいては自分のためでもあるでしょう。
引き抜きの違法性
ごく稀に、引き抜きは違法じゃないのかという、指摘がありますが基本的に法律で罰せられることはありません。
日本人には職業選択の自由がありますので、基本的には問題ありません。
実際にはあなたは同業者に引き抜かれた際に問題になるのは、競業避止義務違反ですが、憲法との関係について、少し難しいですが解説をします。
競業避止義務違反
1番問題になるのは、競業避止義務違反です。
これは競業、すなわち同業者に転職することを禁止する会社の規約のこと。
基本的に法律ではなく、会社と従業員の関係の中にある義務です。
しかもこれは会社規約で指定しておかないと当然ですが効果を発揮できません。
そして日本国憲法には職業選択の自由(憲法22条1項)があります。
この競業避止義務と真っ向から対立する憲法であり、しかも日本では憲法が1番上位の法律です。
ですから理論上対立した場合は、憲法が勝ちますので競業避止が認められることはなさそうです。
しかしながら認められる場合もありそうです。
それは競業によって、企業側が大きな損害を被る場合などに認められています。
なぜかというと合理性がないと見られる規約はに民法上の公序良俗違反(民法90条)として無効とするとなっており、特約の適用範囲に一定の例外が認められています。
例えば管理職であり、企業秘密度の高いノウハウを持っており、その対価とみるに十分な橋梁をもらっていた場合には、権限も低く情報も薄いものである平社員などの保護に値しない基本給以外に特別な手当も支払われていない場合とを比較すると、公序良俗違反は認定されにくい傾向にあります。
じゃあ、いったいどんな場合に訴えられる可能性があるかというと。
その会社しか持ち得ない技術などがあった場合に、その会社からあなたがA社に転職することで技術が転用されて、とんでもなく大きな被害が元の勤め先が被る場合には、競業避止義務違反となり、本人に損害賠償を請求される可能性もあります。
間違ってはいけないのは、引き抜いた会社だけでなく、引き抜かれた本人も損害賠償を請求される可能性があると言うことです。
もっとも可能性があるというだけで、実際に裁判になることは希です。
参考記事:厚生労働省HPより
引き抜きされて報復すると恨まれて恩は帰ってこない
職人が引き抜きにあった際は、快く受け入れてあげることが大切です。
というのも建設業界では、小さな会社であれば、別の現場でも顔を合わせることも多く(だからこそ引き抜きをされる)、転職をしたとしても、今後顔を合わせることもあるでしょう。
世間は狭いので、それを無視することはできません。
基本的にどう思われるかは、親方の人格次第としか言えません。
その後嫌がらせをしたり、何か制限をかければ、その職人がどんなに感謝して恩返しをしようと思ってもできなくなる場合があります。
職人がどんな仕事をするかはその人の人生なのです。
遠くから見守って、独立するならさせてあげればいいし、転職するならそれなりの考えがあってのことでしょう。仲良くしてたら戻ってきてくれる可能性もあります。
絶対に報復だけはすべきではありません、育てたあなたは感謝されるべき人だからです。
まとめ
職人の引き抜きの対策は、一人親方になる方針について話し合っておくこと。
そうすれば手放すことなく、自由に職人を働かせることができて、あなたの会社の職人のクオリティは高いと認められ、さらに仕事が集まってくるでしょう。
そしてそこで自由に職人をさせてあげて、その人が幸せになれれば、あとで恩返しが必ずやってくるはずです。
ですからあなたはまた新たに、職人を育て上げればいいだけなのです。
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